教員インタビュー:増原英彦先生(情報科学)

2018.03.27 インタビュー Facebook Twitter Line

今回の講義紹介では、理系を中心に多くの学生が受講する「情報科学」を紹介する。講義を担当するとともに教科書を執筆された教員・増原英彦准教授にお話を伺った。(この取材後に「情報科学」は終了し、2015年度から「アルゴリズム入門」が始まりました。)

講義の概要

増原先生

この情報科学という講義は、名前の通り情報に関する科学を学ぶものです。講義の内容がプログラミングと関係するため、前半では簡単なプログラミングを勉強し、その後に考え方や概念を、プログラムを書きながら演習形式で勉強します。 この講義は多くの履修者がいるため複数の教員が担当します。そのため、総合科目ではありますがクラス指定を設けています。情報科学という科目になったのは2006年からで、それまでこの科目の元となる「計算機プログラミングI」という科目がありました。その科目はクラス指定を設けないで学生が好きな先生を選んで受講していたのですが、人気のある先生のクラスの人数がものすごく多くなってしまって、演習がとても大変になってしまったんです。そこで人数のバランスを取りたいということで理系の学生に対してはクラス指定を設けてあります。しかし理系の学生だけが受講することを想定しているわけではなく、文系の学生にもこの科目の内容について知っていてほしいので文系の学生も受講できるようになっています。

必修課目「情報」との違い

1年生の夏学期に「情報」という必修科目があり、その後の冬学期にこの「情報科学」が開講されていますが、情報科学では科学的な側面を重視しています。情報の講義では例えば著作権法であるとか、世の中との関わりについても扱っていますが、情報科学はそういうことは扱わず、サイエンティフィックな側面を掘り下げて講義しています。「情報」の講義の中盤で、アルゴリズムとか計算量とかの理系っぽい話があったと思いますが、その部分をもう少し深く学ぶものが情報科学であると考えていただければいいと思います。

講義の内容

増原先生

講義で扱うプログラミング言語はRuby(オープンソースのプログラミング言語の1つ)です。2006年に科目名が変わった時点でそれまで使っていたJavaからRubyに切り替えました。その最大の理由は、とっつきやすいものにしたかったということです。情報科学を履修する学生の半分以上は、今まで全くプログラミングをしたことがないという状態です。ですから最初に面倒なことをやってようやくプログラムが動いた、というよりは、ちょこっと書いたらすぐ動く方が楽しいだろうと。加えて有料のソフトウェアだと、自宅で自習する際にも不都合が生じてしまうので、無料で処理系が手に入るものを選びました。またその言語についてある程度の情報があるもの、つまり教科書以外にも市販の指南書が簡単に手に入る言語が勉強がしやすいだろうという理由もあります。後は見た目ですね。あまりヘンテコな書き方をしなくてもいいという利点があります。少なくとも最初のうちは難しい思いをしなくて済むようにという理由からも、先生方と話し合った上でRubyにしました。

講義を担当する先生が10名ほどいますが、講義の進め方については基本的には先生にお任せしています。私は、自分で書いた教科書だということもあって、教科書の順番で講義していますが、特に後半に関しては、先生によって講義の順番が異なります。また教える内容は同じですが、ご自身で書かれた教科書を使用している先生もいらっしゃいます。進め方は先生方でなるべく良いと思う工夫をなさっています。

去年(2009年)まではウェブ上で公開していた教科書でしたが、紙で出版する予定で書き続けていたものが今年(2010年)の6月に出版されまして、今後はこの紙の教科書を使用します。出版するにあたり書き変わったところがいくつかありますが、大筋においては去年まで公開されていたものと同じです。

講義中の工夫

講義全体の方針として、なるべく結果が目に見えるようにしようとしています。例えば、非常に簡単なグラフィックスが2,3週間後には表示できるようになるとか、そういう風に見た目を楽しくしようという工夫です。後半でも、計算時間がどう変化するかという授業ではリアルタイムで計算時間のグラフが出るようなプログラムを用意して使ってもらっています。私の講義ですと、グラフィックスを出すという授業ではみなさんに面白い図案を作ってもらってその品評会をしてもらっています。そうするとものすごく凝った絵が出てきたりして見ててすごく楽しいし、お互いの刺激にもなって、自分ではうまくいってるんじゃないかと思っています。

品評会には予想しないようなものがいっぱい出てきて楽しいですね。どういう結果にせよ、自分で考えて、式を書き、プログラムを動かして、絵を書いてもらっています。この式と結果を対応づけるために考えるプロセスが結構大事で、いろいろと試してもらえるとすごくいいと思います。残念ながら他の人のものを借りてきてちょっとだけいじるというような作品が見られますが、それはやめていただきたいです。


試験と成績評価

成績評価は共通問題と、先生によっては課題などを加味しています。基本的には教科書を勉強し、授業を受けたらこのくらいは解けるだろうと思って問題を作っていますが、点数の差をつけなければいけないのでそのための問題を作ると、どうしても難しそうな問題になってしまいます。試験の難しさと成績評価はあまり関係がないのですが、過去問を見て難しいと敬遠してしまっているのではないかと考えています。そこで今年度(2010年度)からは今までよりも簡単な問題にしようということになっています。昨年度(2009年度)までのように試験は難しくないので(笑)みなさん是非受講してください。

情報科学を学ぶ意義

増原先生

情報に関する科目は中学・高校で一応ありますが、情報科学みたいなこととほとんどつながっていないんです。そういうわけで恐らく1・2年生のみなさんにとって情報科学は数学や物理と違って今まで接したことのない領域の学問でしょう。ですから、まずはそれがどういうものなのか是非知ってもらいたいのです。世の中にはこういう学問分野があるということを、身につくというよりは知っていることが、教養という意味では大事だと思うんです。付け加えると、今の世の中、進路が将来どうなろうと、情報、具体的に言うとコンピュータとか情報システムといったものを抜きにして世の中を語れなくなっているわけです。今の日本の主力産業は自動車産業かもしれないけど、そのかなりの部分はソフトウェアで動いています。金融についても然りで、実は情報システムが世の中に占める割合がものすごく高くなっているんです。それも過去数十年の短い間にです。この先どんな分野にしろ情報システムとの縁は切れないわけですが、それを単なる道具とみなしてワープロが使えればいいメールが使えればいいじゃなくて、その原理を知っていることがすごく大事だと思うんです。だから文系の人でも知っているべきだと思います。ただ文系の履修者はそんなに多くないので、是非増えてほしいと思っています。

さらに、道具として見たときのコンピュータというのもすごく大事になっていまして、理系ですとかなりの分野で、今何をやるにしてもコンピュータシミュレーションをまずやるという状態です。物理学でも化学でも、最近だと生物学でも、コンピュータで専門的な情報を調べてシミュレーションをしたり自分でプログラムを作って計算して、場合によってはそこから実際の実験をするわけです。そして、みなさんが今後行うであろう最先端の研究においては、誰もやっていないようなことをやるでしょうから、パッケージソフトウェアを使えば答えが出るようなことが期待できません。ですから自分でプログラムを作るということが必要になります。このように情報系の学科に行かなくてもコンピュータを深く使う必要が出てきてる時代ですので、入門としてこの科目を受講する意味があると思います。情報系の学科に進む人にとってはこの講義の内容は簡単すぎるかもしれませんが、この内容の上に積み上げていくことになるので、予め知っておいてほしい内容を扱っていると思います。

学生に求めるもの

増原先生

情報というかコンピュータというか、この手のものの面白いことは、いろんなことがすぐに試せるということだと思っています。化学でも物理学でも、例えばボールに何かをぶつけたらどうなるだろうという疑問を持ったときに、実際にぶつける実験をするのは結構大変です。更に無重力空間で弾性体が衝突したら、なんて考えたらそれはもう実験のしようがないわけです。化学にしたって実験をするにはそれなりの準備が必要で、ちょっとしたアイデアを試すなんてことはそうできません。それに対して情報系、特にプログラミングをするようなものはすぐに試せるんですね。情報系の専門をやっている人はみんな感じていると思うのですが、いろんなアイデアを即座に試せるというのはすごく楽しいことなんです。ですから学問の高尚な部分はさておき、試してみて色々な反応がすぐに出てくるという楽しさを味わってほしいですね。

学生に対してのメッセージ

私が学生のみなさんに常日頃思っているのは、レスポンス――反応が欲しいということです。みなさん控えめな人が多くて、面白いんだか面白くないんだか、分かったんだか分かっていないんだか、把握するのに苦労することが多いような気がします。教える側の技量の問題かもしれませんが、教員は決して怖くないし、かみついたりしませんので(笑)、遠慮なく思ったことを言ってほしいと思います。

取材後記

増原先生

お話の途中で、昨年度(2009年度)の品評会に出てきた課題を見せていただきましたが、自分で受講した当時は思いもよらなかったアイデアにあふれた作品ばかりで驚くばかりでした。グラフィックスの作成という課題1つにしても楽しさが伝わってくるのではないでしょうか。

(編集:東京大学UTLife)

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