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日常生活に欠かせないスマートフォンやノートパソコンといった携帯機器の、文字通り命ともいえる電池。その中でも「リチウムイオン電池」は、高出力・高効率の充放電をおこなえる優れた性能を持つことから現在最も普及しており、その更なる効率化や大型蓄電施設への展開が検討されています。しかし、リチウムイオン電池には希少元素であるリチウムやコバルトなどが多く含まれているため低コスト化が難しく、電気自動車や電力貯蔵のような大規模な普及には課題が残されていました。
リチウムイオン電池に代わる二次電池として期待されている「ナトリウムイオン電池」は、地球上に豊富に存在するナトリウムイオンを用いるため安価に製造することができるものの、その性能は決して高いとは言えませんでした。今回紹介する研究では、ナトリウムイオン電池の性能に深く影響していたマイナス電極の機能を大きく向上させることで、ナトリウムイオン電池実用化に大きく近づくことに成功しました。
繰り返し充放電可能な二次電池には、電子やプラスイオン(リチウムイオンやナトリウムイオンなど)を吸着し放出できる電極が必要であり、その吸着・放出のスピード、吸着できる量が電池の性能に大きく関わっています。今回新たに開発された電極はチタンと炭素からなるシートが積み重なった構造をしており、その特異な層構造によって、非常に大きなナトリウムイオンの貯蔵能、高速の吸着と放出、繰り返し耐性など多くの点で優れた性質を持つことが明らかになりました。研究グループは実際にこの電極をマイナス極として用いたナトリウムイオン電池の試作品を作製しており、実用化に耐えうる高い性能を持つことを確認しています。
安価で高性能なナトリウムイオン電池が実現できれば、携帯機器のコストが下がるだけではなく、発電所等での大型蓄電機の開発にもつながります。スマートグリッド社会の実現に向け、今後ますますの研究開発が期待されます。


イメージ
UTokyo Researchより引用
http://www.u-tokyo.ac.jp/content/400029819.jpg

タイトル
次世代二次電池のプロトタイプが完成 −脱希少元素を実現へ−
発表概要
現在広く普及しているリチウムイオン電池は希少元素であるリチウムやコバルトを使用しており、さらなる低コスト化、特定資源産出国への依存脱却のために、リチウムをナトリウムに置換したナトリウムイオン電池の実現が急がれている。
ナトリウムイオン電池を実現するためには、ナトリウムイオンを吸蔵・放出する化合物の対(プラス極とマイナス極)が必要であり、特に、高性能なマイナス極の開発により、ナトリウムイオン電池をシステムとして完成することが求められていた。東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻の山田淳夫教授、大久保將史准教授のグループは、長崎大学大学院工学研究科の森口勇教授らとの共同研究により、チタンと炭素から構成されるシート状の化合物が多量のナトリウムイオンを吸蔵・放出することを発見した。この化合物をマイナス極として、既知のプラス極と組み合わせたナトリウムイオン電池のプロトタイプを作製したところ、急速充電、長時間の電流供給、充放電を繰り返しても劣化しない安定性などの、次世代電池に必要な性能を満たすことを確認した。
なお、本研究成果の一部は、文部科学省元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>「京都大学 触媒・電池元素戦略研究拠点ユニット」(研究代表者:田中康裕 京都大学大学院工学研究科教授)による支援を受けて行われた。

URL
東京大学工学部「次世代二次電池のプロトタイプが完成-脱希少元素を実現へ- : 化学システム工学専攻 大久保將史准教授、山田淳夫教授」
http://www.t.u-tokyo.ac.jp/epage/release/2015/20150403004.html