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本書は、東京大学の世界史の入試問題の魅力を紹介する本です。

世界史という科目を、みなさん一度は高校で習った人が多いことかと思います。その世界史の試験問題のイメージとはいったいどのようなものでしょうか。もしかすると、単語の穴埋め、正誤問題の選択、知識を並べる記述問題といったものを思い浮かべる方が多いかもしれません。ですが、東大世界史はそのような試験問題とは一線を画します。東大世界史の特徴はなんといっても、第一問の大論述問題です。この論述では、単に多くの知識を持っているだけでは通用しません。知識をいかに活用するのかといった視点が問われるのです。

知識を活用するような問題とはどのようなものか。本書では、大きく「地球規模の歴史」「中華文明・キリスト文明・イスラーム文明の各歴史」に分類して様々な過去の試験問題とその考え方を提示しています。

たとえば、銀について扱った問題では、16世紀の銀の大量産出が世界経済を1つの流れの中に位置づけることを認識させるものです。ヨーロッパ内部での経済的関係と、ヨーロッパと中国、日本といった世界的な経済的関係の変化が銀の流通によって理解できることがわかります。

また、長年フランスとドイツの対立の焦点となっていたアルザス・ロレーヌ地方の支配の変遷を読み解くことで、EUの起源がドイツとフランスを含む6カ国のヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC)であったことが理解できるようになります。フランスとドイツを中心に発展していた過去の2つの勢力の対立が生じていた地域が、今ではこれら6カ国の地域にあたっていたのです。

ところで、文明という枠組みで入試問題が整理されていることに違和感が覚える人はいるのではないでしょうか。その疑問も本書を読むことで解決することができます。たとえば、中華文明の歴史は中国とその周辺諸国の地域をめぐって展開されていますが、その「中華思想」を担う地域は実は必ずしも中国であるとは限らないのです。

本書を読み終われば、東京大学の世界史の入試問題は、読み物として楽しめるだけの奥深さがあることを実感しているはずです。

『歴史が面白くなる 東大のディープな世界史』
祝田秀全 2013 中経出版