東京大学公式の情報サイト「東大ナビ(UTokyo navi)」は、本学の部局や研究所が開催する多彩なイベントの情報を集約し発信しています。


みなさんは自分の身体のどの部位がどのように発生してきたのかについて考えたことはあるでしょうか。
人間など動物の発生は、受精卵の細胞分裂に始まり、神経系などになる外胚葉、筋肉や血管になる中胚葉、消化器官などになる内胚葉といった胚葉の分化を経過して成長していきます。今回の研究は、従来の予想に反し、メダカのウロコやヒレが複数の中胚葉に由来していることを明らかにし、脊椎動物の骨の進化の過程をよりはっきりしたものとしました。
脊椎動物はその発生過程で、外胚葉、中胚葉、内胚葉のほかに、神経堤とよばれる独特の細胞があることが知られていました。従来の研究では、脊椎動物に独特な器官はこの神経堤細胞から分化したものであると考えられており、脊椎動物の最大の特徴である骨組織の外骨格も神経堤細胞からの分化によって作り出されてきたと思われてきました。
今回の研究では、外骨格の姿を残しているメダカのウロコやヒレの発生過程を検証し、ウロコやヒレは神経堤細胞ではなく複数の種類の中胚葉細胞に由来していることを明らかにしました。従来は神経堤細胞に由来するとされていた外骨格が、様々な種類の中胚葉細胞によって作られることがわかったことで、骨の発生がより柔軟に行われていたことがわかりました。この結果によって、魚類から進化を遂げてきた脊椎動物が様々な姿形をとることができた理由の一つに柔軟に作られる骨の存在があった可能性が示唆されました。

タイトル
メダカのウロコが証す骨の起源

発表概要
魚のウロコやヒレが発生中の胚のどの細胞から作られるかは、脊椎動物の骨の起源や進化を解く鍵となる問題であるにもかかわらず、長年謎につつまれたままだった。細胞の運命は胚発生初期にまず外胚葉、内胚葉、中胚葉に分かれ、その後それぞれ、神経系や内臓、骨などに順次分化して行く。さらに脊椎動物には第四の胚葉とも呼ばれる特別な細胞、神経堤がある。通常、これらの胚葉を超えて組織を分化させることは難しいため、細胞の由来(系譜)情報は非常に重要である。東京大学大学院理学系研究科島田敦子助教・武田洋幸教授らの研究グループは、基礎生物学研究所亀井保博特任准教授らと共同で、世界で初めて成魚まで骨の細胞系譜をたどる実験系の開発に成功し、ウロコやヒレが従来の説で考えられていた神経堤細胞由来ではなく、中胚葉細胞由来であることを明らかにした。これによって脊椎動物は予想外に「柔軟」な方法で骨を進化させてきたことがわかった。本研究は骨の発生機構や再生医療に関する今後の研究において道しるべともなる成果であり、分化誘導に関わる遺伝子の探索をより正確に行うための情報となると思われる。

URL
東京大学大学院理学系研究科・理学部 プレスリリース
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2013/11.html