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皆さんは『駒場』と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?諸手続き後に待ち受けていたテント列、サークル活動、駒場祭など様々なことを思い浮かべるのではないでしょうか。でも実は「駒場」について知らないこともある・・・? それを教えてくれるのが、「東京大学駒場スタイル」です!

「東京大学駒場スタイル」とは?
本書は教養学部創立70周年を記念して作られ、教養学部・総合文化研究科を広く紹介することを目的に制作されました。前半では、教養学部長と大隅良典先生の『大学と社会の関わり方』に関する対話や、教養学部の歴史・教育システムが紹介されていて、教養学部の大学教育に対する姿勢や今後の方針等がわかります。後半では、教養学部の17名の研究者による最先端の研究が紹介されています。そのほかにも著名な卒業生のメッセージや、駒場キャンパスの施設が紹介されていて、盛りだくさんな内容になっています!また各テーマごとに話が完結しているため、自分の読みたい所から読み進められます。

教養学部は多様な知識の宝庫
教養学部には、ラテン語から素粒子物理にいたるまで様々な研究者が在籍しています。そのため学生は専門分野の入門だけでなく最先端の研究や多様な分野の知識にも触れることができます。私の友人の1人もたまたま履修していた美術論に興味を持ち、授業時間以外も先生に積極的に話を聞いていました。このように教養学部は学問への興味の幅を広げつつ、深掘りができるという点が他の学部にはない魅力なのではないでしょうか!

三層構造とは?
この本の中で特に印象に残っているのは『三層構造』と呼ばれる教養学部の組織構成です。これは教養学部が『前期課程・後期課程・博士課程』に分かれていることを指しています。

それでは、この三層構造は、教養学部の先生たちにどんな影響をもたしているのでしょうか?まず、所属している研究者から見ると、専門外の教養科目も教えるため、研究の視野が広がり活動の幅が広がるそうです。また、学生との関わり方の面でも影響があるそうです。本書で紹介されている中から、言語情報科学専攻の広瀬友紀教授を例として取り上げて紹介します。

広瀬教授は「教養学部の教員の多くは三つの肩書を上手く使い分けている」と冒頭で述べています。例えば、前期教養課程では『英語部会の先生』、後期教養課程では『教養学部教養学科・超域文化科学分化・学際言語科学コースの先生』、大学院では『総合文化研究科・言語情報科学専攻の先生』という役柄があるそうです。これは『三層構造』において教員が異なる層の学生を相手に教育を行うためです。

一般的に大学の語学教育は『専門に関係のない不本意な仕事』と思われることもあるそうですが、広瀬教授としてはテキストや映像の読解を通じて新しい気付きを共有したり、学生の授業中の反応から研究のヒントが得られるため、ご自身が「イヤイヤ教えているようには見えない自信がある」と断言しています。 広瀬教授は、後期課程では心理言語学の入門を担当しており、文理のコース関係なく学生が受講するため、専門分野の内容に偏る事なく幅広い視点から『心理言語学の面白さ』を共有することが刺激的だそうです。またコースの学生と面談を行って学科コースのカリキュラムや規則が適切であるか検証もしており、クリエイティブな業務であると述べています。

一方、大学院では今までの主体的な業務とは打って変わって後方支援がメインになるそうです。例えば研究方針についてアドバイスしたり、国際学会への参加をサポートしたり、などなど。それでも機会さえ与えれば勝手に成長する学生を見ると「もっといい機会を作ろう!」と奮起してしまうとのことです。

研究は?
教養学部の先生たちは『三層構造』の中で、学生たちに学びの場を提供しながらも、ご自身の研究も進められています。本書でも、自然科学から言語学、社会学など17人の研究者の研究の魅力や学生時代の思い出などについて紹介されています。

たとえば、広域科学専攻の岡ノ谷一夫教授は動物などを用いて言語の起源や進化の研究を行っているそうです。岡ノ谷教授はもともと「動物には意識があるのか」という疑問を物心ついたときから持っていたため、小鳥の聴覚の研究で博士号を取りました。2011年に教養学部に赴任した後は「成鳥ジュウシマツの歌は耳が聞こえなくとも変わらない」という仮説を検証するために音の変化を定量化する手法を用いて解析し、人間の言語の原始モデルへの理解を進めたそうです。岡ノ谷教授の研究は、文系の疑問(動物の意識)を理系の技術(動物実験や統計手法)で挑むようなものであり、幅広い学問分野を包括する教養学部だからこそ力を発揮できるのではないかと思いました。

改めて気づく駒場のこと
どうでしたか?駒場で授業を受けるだけでは知り得ない部分が多くあったのではないでしょうか?この本を読むまで教養学部といえば「教養学部前期課程の延長線上」と思っていましたが、それは三層構造のほんの一部に過ぎないということを痛感しました。またその制度によって学生には学びの多様性を、教員には研究の視野の拡大という恩恵が与えられているということが本書からわかりました。私が教養学部に所属していた時は単位を取るのに必死でした。教養科目の先にある学問の広がりを理解する機会を逃していたのかもしれません。本当に惜しいことをしてしまった….とも感じました。

本書は、様々な視点から『駒場』を紹介しているので、駒場を更に知りたい!、研究の内容が気になる、という人がいれば是非読んでみてください!


 

東京大学教養学部『東京大学駒場スタイル』
(東京大学出版会)
2019/06