東京大学公式の情報サイト「東大ナビ(UTokyo navi)」は、本学の部局や研究所が開催する多彩なイベントの情報を集約し発信しています。


Summary

  • 喫緊の課題である科学と公共政策の協働

  • 副専攻的に公共政策と工学が学べる教育プログラム

  • 東大の最大の武器とは??


みなさんこんにちは。2018年もあと2ヶ月で終わってしまいますね。今年の目標達成に向けて邁進している人、すでに来年の身の振り方について熟考を始めている人、いろいろだと思います。今回は、私の今年の目標の1つであり、みなさんにも是非意識してみてほしい、東京大学のある履修プログラムを紹介させてください!

STIG (Science, Technology, and Innovation Governance) という、東京大学の公共政策大学院と工学系研究科が中心となって開講している本学全学部の大学院生が対象となる横断型プログラム(http://stig.pp.u-tokyo.ac.jp/about.html)を、今回はご紹介します。一見して、工学と公共政策は距離があるように見えます。なぜ今、工学と公共政策のクロスリンクが重要視されているのでしょうか。

技術革新の加速やそれに伴う社会の複雑化を背景に、さまざまな領域において、科学的知見に基づく政策決定をどう行なっていくかが課題になっています。また同様に、イノベーションを生むような技術革新に際して、いかに社会的混乱を起こさずに社会実装を行うかという課題が浮き彫りになってきています。本記事では、これらのSTIGの意義のうち、私の出自である工学や科学に的を絞って考察してみました!

異分野・異業種のノウハウや知識を組み合わせることで、従来の技術革新よりも確実性や流動性を高めたイノベーションを行おうという“オープンイノベーション”が浸透しつつあります。オープンイノベーションをリードするには、分野や業種にとらわれない共通の指針になる、道徳や法などの人文学的素養も身につけ、異分野・異業種の文脈を理解できる人材になる必要があると言われています。

異なる道徳観をもつ場合どのように協働すると良いのか、過去の特集記事にて紹介しています!(参照:『場当たり的にならない道徳の考え方 〜AIに「善悪の判断」を教える方法〜』 (http://www.todainavi.jp/archive/14858/))

道徳は明文化されていない法のようなもので、トマス・ホッブズに代表される「自然法」という概念は、まさにその道徳が法として機能しているような状態です。日本の憲法と法律を例に考えてみると、日本国憲法は天賦人権を認めていて、自然法的な機能をもつとも考えられています。それだけに、憲法の改定というものは重大な意味を持ちます。一方で、法律は、過去に起こった非道理的な行為を禁ずるための規律をつくる「実定法」的なものです。その構造上、未知の社会問題には対処しにくいという弱点があります。

さて、イノベーションは、従来の社会では想定していなかった技術革新に立脚するものであり、それに関わる社会問題は、実定法では対応できないことが多いです。よって、「実定法である法律が対応してないから何をしても大丈夫」と考えるのではなく、自然法的な憲法や道徳に照らし合わせる必要があります。つまり、技術革新によって新しい市場を作る場合、同時に自分自身で新しい法制度や公共政策も考えなければならないのです。アルフレッド・ノーベルがダイナマイトの発明を悔やんだように、アカデミアであれ企業であれ、何かを生み出す際に社会的影響を考えることは不可避的な要件です。

金融業界におけるITイノベーション周りのシステムや法制度の変化に関するレポートも、過去の特集記事にまとめられています!(参照:『新時代における金融システム・法制度の展望 〜シンポジウム参加レポート〜』 (http://www.todainavi.jp/archive/15052/))

道徳哲学や法を学ぶことは、オープンイノベーションにおいて、異分野・異業種の人と共創する際の共通言語や、社会実装をする際の自己規範になり得ます。そのような理系人材にも有益な法や公共政策に、科学的な文脈で触れることができる教育プログラムがSTIGだと感じています。

必修の講義(「科学技術イノベーション政策研究」)では、多種多様な専攻の大学院生が集まり、スマートシティ・遺伝子技術・自動運転といった最新の技術革新トピック、および、社会実装するための適切な監督法立案・推進策や規制の経済効果推定・技術の社会浸透に向けたビジネスモデル策定という法・公共政策的な方法論からそれぞれ1つを選び、グループワークによる事例研究も行います。それはまさに、オープンイノベーションに際して、異分野・異業種のノウハウや知識を組み合わせ、科学と社会の界面をデザインするということに他ならず、今の時代で活躍するためのエッセンスが学びとれる講義になっていると思います。

私は、東京大学の最大の武器は、総合大学であることだと考えています。分野の垣根を超えて交流が生まれやすい風土であり、交流を生むためのプログラムもたくさん用意されています。進学選択の際に、「進学先で将来の進路は決まってしまうのか」「進学時に興味関心を絞らないといけないのか」という不安を抱く人は少なくないと思います。しかし、東大には上記のような“地の利”があります。みなさんも、総合大学という地の利を活かして、東京大学を最大限活用してみてはいかがですか?