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みなさんこんにちは、ゴールデンウィークはいかがお過ごしだったでしょうか。旅行に出かけた方、実家に帰った方、家でぼーっとしていた方、色々いると思いますが、久しぶりに親御さんとゆっくりした方も多いのではないでしょうか。私自身、家族旅行で海外に行っていました。かつて楽々と重たいキャリーケースを運んでいた父親も、定年を迎え、やや体力が落ちているように思われました。大切な人にいつまでも元気でいてほしい、そして病や衰えの兆候をいち早く察知し対処したい、そう考える人も多いと思います。しかし、医者でもない私たちは、どうすればそれらを知り、大切な人と長く健康に暮らすことができるのでしょうか。

今回はみなさんにある本を紹介したいと思います。東京大学高齢社会総合研究機構の、飯島勝矢教授の著書である「東大が調べてわかった衰えない人の生活習慣」という本です。飯島先生は現在、東大の柏キャンパスで大規模高齢者フレイル予防研究、通称「柏スタディ」に従事されています!フレイルとは、年をとるにつれて筋力、認知機能、社会とのつながりを含む心と体の活力が低下した状態をいいます。フレイルは「虚弱」を意味する英語のフレイルティを語源とし、多くの人が健康な状態からフレイルを経て要介護状態になると考えられています。その兆候に気づき進行を食い止めることが、健康寿命の延長につながります。気になる予防法ですが、柏スタディの結果、「しっかり噛んで、しっかり食べる」「運動する」「社会とのつながりを持つ」というものが見えてきました。

例えば、「しっかり噛んで、しっかり食べる」について。近年、新型栄養失調という問題が浮き彫りになってきています。70歳以上の6人に1人が該当するといわれるこの傾向は、みなさんの「健康のために」という意識から生まれるそうです。メタボリックシンドロームを意識するあまり、肉や卵、脂っこいもの、さらには炭水化物まで避けてしまい、栄養を不足させながら体重を落としてしまう。高齢期になってからの体重減少は、フレイル予防の大黒柱たる筋肉を失う可能性が高く、たんぱく質を不足させることで記憶力や思考力の低下、さらには鬱状態まで誘発してしまうそうです。体重60kgの人は1日に80gのたんぱく質(200gのサーロインステーキに30g)を摂取する必要があるといわれており、ただでさえ老化とともに筋肉の生産効率は低下するため、高齢期を見据え、50代あたりから「ゆるやかな肉食系」にシフトチェンジしていく必要があるといえます。

このように、思い込みや短期的な観点での判断を原因として、フレイルは突然あなたの大切な人のもとにやってきて、そのままあなたとその人の関係を変えてしまいます。さらには、自分はまだまだ若いから大丈夫と感じたあなたにも、実はフレイルになる可能性が潜んでいます。フレイル研究者の間で、女性の「美白」や「ダイエット」に関して危険性を訴える流れがあります。日差しを避けることにより、骨や筋肉を維持する働きをするビタミンDが不足します。また、無理なダイエットをすることにより、女性ホルモンのバランスが崩れてしまいます。これらの問題は骨粗鬆症に将来罹患するリスクを高めるため、フレイルとも密接な関わりがあります。ダイエットなどにより、高齢者に増えている新型栄養失調にかかる若い女性もいるといいます。フレイルにならない生活習慣を身につけるためには、若いうちから丈夫な骨と筋肉を備えた体をつくることが大切なのです。

本書には、フレイルのリスクを知るためのチェック法や、今回紹介しなかった、「しっかり噛んで、しっかり食べる」「運動する」「社会とのつながりを持つ」に関わる様々なフレイルの予防法が紹介されています。老齢になってきた大切な方々の暮らし方だけでなく、ご自身の老後を意識した取り組みにも、一度きちんと向き合ってみてはいかがでしょうか。

飯島勝矢  東大が調べてわかった 衰えない人の生活習慣(KADOKAWA)
2018/03