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みなさんこんにちは。新年度がはじまり、新しい生活をはじめた方も多いのではないでしょうか。新しい生活には新しい学びが伴います。業務で用いるスキル、知識、人間関係、様々なものを学び体得しなければならない日々が続き、とても大変かと思います。そんな学びの嵐の中、忘れてはいけない大切な要素があります。それは「バイアスなく俯瞰的に学びを発見する」ことです。1つの世界における真理は、他の世界においても真理とは限りません。アカデミアの世界においても、原子力の平和利用と軍事利用の例を引き合いに出すまでもなく、研究者の真理が、人間社会一般の真理と完全に重なるわけではありません。そのようなディレンマを認識した上で、絶えず、学ぶものを、向かう先を、創り出そうとする世界観を考え直す必要があります。

とはいえ、大学を卒業してしまうと、バイアスのかかっていないオープンな学びの場を見つけるのは至難の技です。いたしかたないことですが、企業人の企画する「多様性を持つため」の会合の裏には、なんらかの損得勘定的な意図があり、結局のところバイアスだらけであることが多々あります。それでは私たちは、卒業後に、どのようにして俯瞰的な学びを発見すればいいのでしょうか。

東京大学では、大学で培われた豊かな知を以って社会全体の知的成熟を成し遂げるべく、1953年の開講から65年の長きに渡り、「東京大学公開講座」が開催されています。現在の公開講座は、年に2回安田講堂で行われ、1つの大きなテーマに関して、3日間各日3名、計9名の東大教員がそれぞれの視点から論じるというものになっています。そのテーマは本当に大きなもので、「防ぐ」や「空」、「新たな秩序」など、タイトルからはなかなか個々の講座の内容が想像できない、ワクワクするものになっています。例えば、「新たな秩序」というテーマで行われた第126回の公開講座では、「宇宙線で見る宇宙の新たな秩序」や「仏教が説く秩序の形成と崩壊」、「パーソナルデータの循環とスマートソサエティ」など、文系理系、応用基礎関係なく選ばれた9名の教員の方が、それぞれの考える「新しい秩序」を紹介するという回になりました。そんなオムニバス形式の講座を通して、東京大学は社会一般に対してどんなメッセージを伝えたかったのでしょうか。

東京大学公開講座では、大きなテーマを設定してはいるのですが、個々の講座で先生が話す内容に関しては、特に取り決めはしておらず、それぞれの先生に任せています。それこそが、この公開講座の”ミソ”であり、あえて参加者のゴールを設定しないことにより、「バイアスなく俯瞰的に学びを発見する」ことができるのです。自身の抱える悩みに照らし合わせ新しい知見を得るもよし、大きく抽象的なテーマに対して個々の具体的なお話から自分なりの解釈を導き出すもよし、いろんな研究者のいろんな思考に触れ考え方の枠組みを学ぶだけでも良いのです。

ちなみに2018年度春季の公開講座は、「ディレンマ」をテーマに、5月26日、6月9日、6月23日(全て土曜日)に開催されます。上述しましたが、何事にも「あちらを立てればこちらが立たない」というようなディレンマが伴います。各日程におけるサブテーマは「制度設計と技術革新のディレンマ」、「学術研究のディレンマ」、「地球規模のディレンマ」となっています。それぞれの日程ごとに総括討議もなされるので、全日程9講座を聴講しても、気になる日程だけ聴講しても実りある機会になるかと思います。私自身、「社会に生きる人間としての私と一個人としての私のディレンマ」を考えるキッカケになればと思い、参加させていただきます。みなさんもぜひ、自分なりの課題を持って、ディレンマに挑みにいきましょう。

卒業式や授賞式などの特別な場面でしか入ることのできない安田講堂で、授業も仕事も休みである土曜日の午後、視野を広げる学び直しをしてみてはいかがでしょうか。

東京大学公開講座
https://www.u-tokyo.ac.jp/publiclectures/index.html