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読者の中には、大学卒業後、海外大学院に進学すること、または高校からそのまま海外の大学に入学することに興味を持っている方もいることだろう。

前半では、東京大学工学部を卒業後、マサチューセッツ工科大学(MIT)に留学し、昨年、修士課程を修了、現在、同博士課程に在学中の小野雅裕さんに、留学の動機や留学後の苦労について、お話を伺った。

後半では、東京大学経済学研究科修士課程を修了後、ハーバード大学に留学中の山本裕一さんも加わっていただき、アメリカの大学と日本の大学の違いについて、お話を伺った。

宇宙の道を志す

小野雅裕さん

東大に入る前から、理学部物理学科か工学部航空宇宙工学科で、宇宙について勉強をしたいと考えていました。物理学や天文学は宇宙を見ることを学びますが、航空宇宙は宇宙に飛ばすモノを作ることに主眼を置いています。自分は、100億光年先のものを見るよりは、もうちょっと人間の活動レベルに近いところに興味があり、航空宇宙工学科に進みました。

航空宇宙工学科では、空き缶人工衛星のCanSatで有名な中須賀真一先生の研究室に入りました。空き缶に人工衛星としての機能を詰め込んだものを作り、モデルロケットの先端に取り付けて、アメリカの砂漠から飛ばします。そこで得たマイコンのプログラムや基盤設計の技術は、のちのち役に立ちました。

もともと、その研究室にすごく興味があって、大学2年生の終わりくらいから先生にお願いして、衛星プロジェクトに参加させてもらいましたね。本格的に取り組み始めたのは3年生の終わりくらいですが、連日、徹夜して、修行のような感じでした。

小野さんの留学動機

僕が幼かった頃、父親が企業派遣でアリゾナ大学に留学して、その頃の話をよく聞かされていました。その影響で、いつか留学したいなと漠然と思っていましたが、大学に入ってから交換留学をするとか、就職してから企業派遣されるという選択肢もあるだろうとか、その程度にしか考えていませんでした。

僕は旅行がすごく好きで、バックパックを背負って、気ままな旅を何度もしました。そのせいか、海外に行くことに対する抵抗感はあまりありませんでした。

また、東大を出て、日本のエリートコースに乗るという規定コースに対する根拠のない嫌悪感のようなものを感じていて、どこかで抜け出してみたいという気持ちがありました。

その3つの気持ちがあった中で、僕が大学の3年生のときに、4歳上の先輩でMITに長期留学していた方が、東大でプレゼンをしてくださったんですが、それを聞いて、目からうろこが落ちるような感覚がしました。すばらしい教授や学生が集まっているということもさることながら、何よりびっくりしたのは、学生が研究室のリサーチアシスタント(通称:RA)として働き、給料をもらいながら、勉強しているということです。インターネットなどで、海外の大学の学費が非常に高いことは知っていたのですが、その学費をカバーするRAなどの制度があることは知りませんでした。

そのような刺激によって、今までたまっていたものに火がついて、ためしに応募してみようと思い、航空宇宙の分野で最先端の研究をできるMITとStanfordに応募しました。

アメリカの大学の合格通知は、RAのオファー付きの合格、RAのオファーなしの合格、不合格の3通りがあります。私はどちらもRAのオファーなしの合格でした。他の奨学金も落ちていましたし、かなり迷ったのですが、このチャンスを逃したらもう二度とチャンスは来ないのではないかと思い、親に頼み込んでお金を工面してもらい、留学することにしました。1年以内に自分でお金を見つけるという約束をし、もしもだめだったら、東大に帰ってくるというつもりでした。

留学から現在まで

小野雅裕さん

入学後は、いろいろな先生のもとに行き、RAの仕事を探しました。たいていはうまくいかないので、しつこく何度も話に行きました。結局、入学後数ヶ月経ったころに、RAの仕事をもらうことができました。

短期の交換留学、語学留学といった形での留学は、経験にはなると思いますが、キャリアには繋がりにくいのが現状です。学位の取得を目的とした長期留学では、経験だけでなく、国際的なキャリアも開けます。

私の進路についてですが、最近は、自分が航空宇宙を突き詰めていくのは、本当に世のため人のためになるのかということに悩んでいます。20兆円も使って火星に行ってどうするのか、宇宙が生み出す価値というのはどの程度あるのかということを考え始めました。博士課程の期間でその答えを出したいと思います。

ちゃんと修士号も取れたし、留学したことについては、おおよそ満足しています。苦労は多いですが、そこから得られる体験は濃いと思いますよ。

後半では、東京大学経済学研究科修士課程を修了後、ハーバード大学に留学中の山本裕一さんも加わっていただき、アメリカの大学と日本の大学の違いについて、お話を伺った。

山本さんの留学動機、そして現在

山本裕一さん

山本さん:

大学に入った頃は、研究者になろうとも、留学しようとも考えておらず、英語は勉強しないで済むならその方がよいと考えていました。経済学部の3年生になってゲーム理論のゼミに入ったのですが、それが楽しかったので、大学院に行こうかと思い始めました。

東大の経済学研究科修士課程では、さらに博士課程に進学する人の半分くらいは留学するので、研究者になるなら留学するものなのかなという程度の認識でした。東大の若い先生でも、アメリカの大学院に行って、博士号を取ってきた人が多く、先生にも薦められていので、そのころから留学を意識し始めました。

博士課程修了後は研究者になりたいと思っていますが、詳しいことはこれから考えたいと思います。修了年限は平均5年程度なのですが、それまでにはまだ時間に余裕があるので、その間に決めるつもりです。

アメリカの大学と日本の大学の違い

小野さん:

大きく違うのは、アメリカの大学の研究室のシステムには市場原理が働いていることです。教授はスポンサーに研究を売り込み研究費を取ってきて、そのお金でRAの学生を雇います。そのため、自分の趣味に偏っていて、社会の役に立たないような研究は相手にされない。

お金をもらっている以上、スポンサーを満足させなければいけないので、自分の好きな研究に没頭できるかというと、必ずしもそうではありませんね。

もっとのびのびできるというのが、日本のいいところでしょうか。

山本さん:

ハーバード大学経済学部の大学院には、数学、コンピューターサイエンスなど、いろいろな学部から学生が来ます。アメリカは学部と大学院の教育レベルの差が激しく、最初に基礎的な部分を詰め込み教育するのですが、それが日本と違うところだと思います。そのため、日本の大学院と違って、自分の好きな研究をやる時間が取れず、最初の1年間はcore courseと呼ばれる基礎科目の勉強に偏りがちになります。

私の学部では、マクロ経済学・ミクロ経済学・計量経済学という3つのcore courseをパスする必要があるのですが、日本の修士課程で勉強してきた人にとっては既習の内容が多く、やや二度手間的な側面があるかもしれません。

小野さん:

逆に、僕は授業から多くのことを学びました。アメリカでは、先生の授業に対するモチベーションがとても高く、その分、生徒に対する要求も高いのですが、ちゃんと学べます。僕は、アメリカに行ってから研究分野が若干変わったのですが、それも授業のおかげでした。授業によって、新しい視野が広がりました。

講義は一般的な説明をして、毎週それに関する課題が出るというスタンスです。日本と違うのは、課題の量がかなり多いということでしょうか。進め方に大きな違いはないです。

小野雅裕さんと山本裕一さん

山本さん:

僕も、日本と基本的には変わらないと思います。浅く広く駆け足で授業は進むのですが、課題の量が膨大であるということが大きな違いでしょうか。

それからもう一つ、日米の大学の違いについてですが。1年目のcore courseで点数が悪いと、プログラムによっては、放校処分になってしまうケースもあるらしいです。そういう意味では、のびのびできる日本の方が、いいですよね。(笑)

留学の情報源の少なさ

小野さん:

僕は先輩に聞くくらいしか、情報源がありませんでした。おそらく、海外の大学に興味がある人は多いと思うのですが、情報源が少ないので、単純にチャンスがあることを知らない人が多いのでしょう。私も昔はそうでした。

ある程度、流れができるともっと多くの人が海外の大学を意識するようになるのでしょうね。

山本さん:

経済学部には留学を意識するような流れがあると思います。

留学が第一とは思いませんが、留学という選択肢があることを、もっとアピールしていってもいいと思います。誰もいないと相当勇気がいると思いますが、情報があれば、もやもやしていたものが吹っ切れるということもあると思います。

小野さん:

是永淳さんという方のweb bookに、海外大学院への留学に関する情報が詳しくまとめられているので、まずはそれを見るのがいいと思います。

経済的な心配をすることなく、世界中のエリートが集まる最高の環境で勉学に励み、学位を取ることが出来る、そんな素晴らしいチャンスがあることを、まずは皆さんに知っていただきたいですね。

留学に興味がある人へ一言

小野雅裕さんと山本裕一さん

山本さん:

20代を海外で過ごすというのは、得がたい経験だと思います。もちろんそこにはリスクもあるわけですが、留学経験者とかいろいろな人と相談して、悩んで、いい決断をしてください。

小野さん:

自信があったら、ぜひともチャレンジしてください。英語ができないと、それだけで劣等感を持ってしまいがちなので、何かしら自信があるということは重要だと思います。

小野さん、山本さんのプロフィール

小野雅裕さん

2005年、工学部航空宇宙工学科卒業。2007年、MIT School of Engineering, Department of Aeronautics and Astronautics修士課程修了。現在、同博士課程在学中。

小野さんのホームページ

山本裕一さん

東京大学経済学部卒業。業東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。現在、Harvard University, Department of Economics博士課程に在学中。


小野さんは、STeLA(Science and Technology Leadership Association)という、「グローバルな理系リーダーシップの啓発」を目的とした、日米大学の学生から成る団体で活動されています。2008年はボストンでリーダーシップフォーラムを開催する、とのことです。興味がある方は、STeLAのホームページを覗いてみてください。

また、小野さんは、緒野雅裕という名前で小説を書いているそうなのですが、この度、「天梯(てんてい)」という作品が織田作之助賞青春賞に選ばれました。受賞作品は、毎日新聞社のホームページに掲載されています。

(編集:東京大学UTLife)