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みなさんこんにちは、試験期間も終わり春休みを満喫しているという人が多いのでしょうか。東京大学には、「正解のある問い」を一人で解くことに慣れていて、そのような問題に対して、速く正確に効率よく答えを導き出す能力に長けている人が多い印象があります。期末試験なんかはそういう問題が多く出題されますよね。その反面、就職活動やクリエイティブな活動など、「正解のない問い」に対して向き合った際に、なかなか結論を導き出せなかったり、そもそも考えることを避けてしまったりするという悩みをよく聞きます。よく言われる「正解のない問い」ですが、これには本当に正解はないのでしょうか。

今回は、東京大学教養学部と博報堂ブランドデザインスタジオが共同で開催している「BranCo!」という講義で扱われた、「考える力」の系統的な鍛え方について書籍化した「東大教養学部「考える力」の教室」という本を紹介したいと思います。

そもそもなぜ、「正解のない問い」に挑む必要があるのでしょうか。「正解のある問い」を解くことは、「過去を知る学び」とも言い換えることができます。もちろん大切なことではあるのですが、過去を知ることだけで未来を発想することはできません。社会には、過去を知ることで現在を改善する仕事と、全く新しいコンセプトを打ち出し未来を創造する仕事が必要になります。さらには、会社に入って働く以上、「みんな」で「正解のない問い」に挑む必要があるのです。

本書では、そのような「「正解のない問い」に「共に挑む」」ための方法論やそれを身につけるための訓練法が章立てで紹介されています。具体的には、そのような問題に挑むためのマインドセット、インプットのし方、コンセプト創発法、アウトプットのし方、共創のし方といった順番で紹介されていて、「リボン思考」と呼ばれる考え方のフレームワークが実践できるようになっています。リボン思考を身につけることで、新しいものをつくる力が身につくだけでなく、人生のあらゆる局面で必要とされる「伝える力」や「グループで話す力」、「書く力」が鍛えられるそうです。

まずはインプットから。情報を集める段階だから漫然と網羅的に調べようとしてはいけません。「問う力」ですべてが決まるというように、素材の集め方自体をクリエイティブにし、楽しく情報収集することが出来るアイデアを入れていくことが大切だそうです。それに関して、面白い例が紹介されていました。「京王井の頭線の新しいサービスを考える」というワークショップを開いた際に、あるチームは「井の頭線の車両の中で使いにくいところを探してみたら、何か発見があるのではないか」という問いを立て、井の頭線に乗車することを通してインプットしました。一方で、他のチームに、「井の頭線は、鉄道以外で何か似ているものはないか」という問いを立て、最終的に「表玄関と裏玄関があってにぎわっているところ」という共通項から、ショッピングモールに赴きインプットを行いました。どちらが正しいとか間違っているとかはないのですが、後者のグループの方が面白いアウトプットになっていたそうです。これは一重に、面白い問いを立てて面白いインプットを行ったからに尽きます。このように、インプットの段階からクリエイティブになることは重要だと言えます。

次いで、コンセプトの打ち出し方です。コンセプトとは、解き方における肝であり、「(ひとことでいうと)何なのか」というものです。例えば、スターバックスでいえば、家でも職場でもない居場所という意味で”Third Place”がコンセプトなのだそうです。このコンセプトがないと、課題とアイデアが一対一対応になり、誰が考えても同じ答えにたどり着く結果になりがちです。かといって、名コピーライターになろうとして突飛なコンセプトを打ち出せばいいわけでもありません。意外性と納得性を満たすようなコンセプトを発案してみましょう。

アイデア立案のプロセスとしては最後の、アウトプットです。インプットからコンセプト立案の段階で、発散していた情報を収斂してまとめたものを、再び具体的なアイデアとして発散させましょう。本書には、様々なアイデアの発散法が乗っているので、ぜひ実践してみてください。

最後に紹介されているのが、チームで答えを出す共創力の話です。インプットから始まり、コンセプト選定を行い、アウトプット立案に終わるプロセス全体において、「量」は「質」を後押しします。もちろん一人一人の力を高めることも大切ですが、チームの力を信じ合いチームの力を最大限引き出すことがチームワークにおける大切なことである。

本書のような本を読んでも、いきなり実践することは難しいかと思います。しかしながら、このようなことを意識して「正解のない問い」に「共に挑む」」訓練を積むことで鍛えられる能力だと思います。そんな能力を携え、人生そのものを豊かにしてみてはいかがでしょうか。

宮澤正憲(2017)東大教養学部「考える力」の教室(SBクリエイティブ)